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My Dear Friend-FGO2部5章を終えて、マンドリカルドと友情についての雑感

<!!!Atention!!!>

この記事は、ゲーム「Fate/Grand Order(以下、FGO)」第2部5章「"神を撃ち落とす日"神代巨神海洋アトランティス」の重大なネタバレを含んでいます。また、読者が同ゲームの1部、1.5部、2部の全章をプレイし、Fateシリーズにおける前提知識を持っていることを前提とした文章です。最低でもFGO第2部5章のプレイ後に閲覧することを強く推奨します。

 

12月18日、FGO第2部5章が配信されました。いやー面白かった!!!!楽しみにしすぎて2日でクリアしました。ぼくはソシャゲが苦手なタイプの人間なのですが、ことFGOに関しては類を見ないハマり方をしてしまっています。まさにオールスターというべきゲームであるFGOですが、またしても新たなるサーヴァントの登場、さらにこれまでも活躍してきたキャラクターの更なる大活躍、とにかく盛りだくさんで、これまで待ち続けたファンの期待にバッチリ応えるシナリオだったのではないでしょうか。毎度新章をプレイする度に「うおおおおお!!」ってなる瞬間があるんですが、今回もそれに違わず熱い展開だったなあ、と。そしてここでラスボス登場なのか?早くねえ?と思っていたら、なんとこの5章は壮大な導入だったのか、という気持ちです。ベリルとデイビットは一体何するんだ・・・・と今から戦々恐々。

さて、第2部5章では、ぼくにとってちょっとした驚きの存在がありました。今日はその驚きの存在について、かなり長文のお気持ちブログを書こうと思います。

 

・藤丸立香とサーヴァント

本題に入る前に、主人公の藤丸立香が辿ってきた道程を振り返ることにします。

そもそも、藤丸は選ばれたマスターではありません。レフ・ライノールによる工作で、後のクリプターであるAチームの人員が失われたことによる消去法によって彼はグランドオーダーの主軸となります。彼はFateシリーズにおいて珍しい「魔術師たり得ずにマスターとなった主人公」であり、物語の中でも言及されていますが、秀でた素質があるわけでもなく、これまでの主人公のように特殊な才能や、ある種常軌を逸した英雄の素質があるわけでもない、時折見せる頑固さやポジティブさを除けば、ごくごく普通の人間と言わざるを得ません。こうしたタイプの主人公には何らかの特殊な手助けが必要です。何もない主人公は共感こそ生みますが、物語を進める能力が欠けているからです。その手助けとなるのが、FGOにおいては個性豊かなサーヴァントでした。

最初の特異点であるオルレアン、そして2番目のセプテムにおいては、物語の主軸としてジャンヌ・ダルク、ネロがそれぞれ登場します。彼女たちは、グランドオーダーに挑み始めた藤丸に「やるべきこと」を与える役割を持っていたということができるでしょう。混乱のうちに始まったグランドオーダーに対して、藤丸が進めるべき工程を明らかにし、取り組むべき課題を示すナビゲーターです。3章のオケアノスにおいては、フランシス・ドレイクがその役割を担うことになります。4章はその集大成として、藤丸が打倒すべきゴールを探求する旅になります。ヘンリー・ジキル=ハイドとモードレッドをその道先案内人として、霧のロンドンにおいて魔術王ソロモンの存在が明示されました。

1部の序盤4章を「藤丸が目指すべきゴールを明示するための旅」と定義するならば、5章~7章までは「藤丸が目的に辿り着くまでの成長のための旅」ということができます。北米大陸で出会うエジソンは「信じる方向へ国を導く存在」として登場します。6章で登場したアルトリア・ペンドラゴンは、人理焼却後も人類を守るため、「彼女の正義に適合する人間を標本のように管理する」という極めて歪んだやり方での正義を実行しようとしていました。現在アニメで描写されている7章のバビロニアにおいては、ウルクの王となったギルガメッシュが民と王のあり方を見せ付けます。奇しくもこの三者は王を名乗って藤丸に対し「人類のあり方」を示し、特異点の修正を通して、藤丸のゴールに対するあり方を問うている、ということができるでしょう。これらの問いかけに対し、藤丸は終局特異点で「間違っていたとしても人間のあり方として進む」という答えを示すことになります。

人理焼却を過ごした藤丸を待っていたのが、亜種特異点と呼ばれる1.5部を経て辿りついた第2部の始まりでした。藤丸にとって1.5部~2部は「これまで歩んだ道程の正しさを問う旅」です。人の悪意と虚構の存在をテーマとした1.5部を経て、2部では異聞帯と呼ばれる「ありえたかもしれないIFの世界」が登場します。彼の辿った特異点修正とは異なり「既に完成してしまった世界」を剪定する、ということが求められます。

これまで藤丸が辿ってきたのは、大まかに言えば「間違っている世界を正す旅」でした。それは世界を取り戻す旅であり、利他的な行為です。ですがこの異聞帯は「それ自体が各個の確率した世界」であり、藤丸を始めとしたカルデアは異聞帯にとってみれば「世界を破壊する存在」です。1部全8章と1.5部5章の旅を終えて、藤丸は初めて「利己的な戦い」を強いられることになるのです。それが正しいことなのか迷う藤丸に、2部でもその先導となる存在が現れます。その代表格がロシアにおけるパツシィ、北欧におけるナポレオンでした。この2人は、1部におけるジャンヌやネロ、ドレイクと同様にナビゲーターとしての役割を持った存在であるということができます。中国・インドにおいては始皇帝アルジュナの2人が登場し、それぞれの世界のあり方をもって藤丸の眼前に立ちはだかります。彼らは1部後半の登場人物のように、異聞帯を剪定しようとする藤丸の覚悟を問う存在でした。

ここまでの旅路で藤丸は既に一般人と呼ぶにはおこがましいほどの活躍をしているわけですが、それでも敢えて言うならば、一般人たる彼がここまで旅を進める上で、道先案内人の存在が不可欠でした。才能なき彼を引っ張る存在であるサーヴァントと、彼が守りたいもの、彼を支えるものとして後ろに控えるマシュやカルデア。そうした存在がなければ、彼はここまで走ることはできなかったでしょう。彼の出会いに、意味のないものなど1つもなかった、ということができます。結果論ですが、全ての出会いは彼を助けるためにあった、と言っても過言ではないはずです。

ところが、この第2部5章では少し毛色が異なるサーヴァントが登場します。

 

・藤丸立香と「友達」

最近YouTube講演家として知られるようになった鴨頭嘉人氏によると、友達とは「会う理由がないけど会う人」と定義できるそうです。例えば何の用事もないけど会ってカフェに行き、何時間も喋るような人のことだと。

鴨頭氏の言葉に基づくと、藤丸には「友達」がいません。彼の出会いには全て意味があるからです。そもそもFateシリーズにおいて、サーヴァントの召喚には「縁」が必要になります。ゲーム中で何度も取り上げられていますが、彼らは何らかの意味を持って藤丸の前に現れるようにできています。そもそも人類存亡の危機に瀕している世界を戦うのですから、意味のない出会いに割いている時間などない、ということもできます。

ぼくの記憶が確かならば、これまで藤丸を導いてきたサーヴァントは数あれど、彼と対等に並び立とうとしたサーヴァントは皆無でした。例えばずっと共に戦ってきたマシュでさえ、藤丸は「先輩」であり、あくまでマシュは彼の後ろをついていく、という姿勢を崩していません。そもそも戦闘行為をサーヴァントに任せることが多いFate世界において「人間とサーヴァントが並び立つ」ということ自体荒唐無稽な話です。人間とサーヴァントが結果として友情に似た感情を抱く、ということはありえるかもしれませんが、友情を抱くことを目的とする必要は全くないのです。

しかし、このアトランティスにおいて、強い意味付けがなされないままに召喚されたサーヴァントが現れました。

 

・マンドリカルドの「意味」

マンドリカルド。中世・ルネサンス期に編纂された文学作品であるシャルルマーニュ伝説において、シャルルマーニュ―後に神聖ローマ帝国初代皇帝、カール大帝と呼ばれる人物です―に仕える十二勇士の筆頭、ローランの敵役として登場する、タタール人の王であり、聖剣デュランダルを求める冒険者です。

ルドヴィーコ・アリオストによる原典「狂えるオルランド」における彼は、父アグリカンをローランに討たれ、その後継として王座に就きました。父の復讐を果たすべく武者修行の旅に出る過程で、トロイア戦争の英雄ヘクトールの鎧兜を手にした彼は、「ヘクトールが持っていた聖剣デュランダルを手にするまで、それ以外の剣を手に取ることはない」という誓いを立て、デュランダルと宿敵ローランの首を求めて旅を続けます。しかし彼の誓いは、意外な形で成就することになりました。ようやく巡り合った宿敵ローランが、恋焦がれていた美姫・アンジェリカの結婚を知り、発狂してしまうのです。ローランは戦いの場を離れます。後に残されたのはマンドリカルド、そしてローランが身に着けていた聖剣デュランダルと、名馬ブリリアドーロでした。マンドリカルドは己の誓いに従い、これを手に入れます。それは騎士道に背く行為を咎めた他の騎士や、デュランダルを狙う諸国の王との戦いを意味していました。その戦いの中、十二勇士が一人ロジェロの持つヘクトールの盾を狙った彼は、逆にロジェロの持つ魔剣ベリサルダの餌食となってしまいました。

こうした原典の彼の行いを反映してか、FGOにおける彼の性格は卑屈でコミュニケーションに不安を持つ、「陰キャ」そのものです。はぐれサーヴァントとして召還された彼は、ノーチラスの船長であるキャプテン・ネモを回復する手段を探すカルデア一行の前にはぐれサーヴァントとして現れ、藤丸のサーヴァントとして物語の中心を担うことになります。その過程で敵の強大さ、自身の判断に悩む藤丸に寄り添いながら、彼は藤丸と単なる主従関係ではなく「友達」として関係性を築いていきました。藤丸にとって、初めての「友達」です。

あくまでこれはぼくの意見ですが―――マンドリカルドの登場には、必然性がないように思うのです。イアソンやオリオン、アキレウス、コルデー、パリス、ヘクトール、バーソロミュー、ドレイク、望月千代女は、まだその登場に意味付けができます。アトランティスの舞台であるギリシャ神話に登場する英雄はうってつけの登場人物ですし、日本原産のサーヴァントである千代女はその体に宿した呪を用いてエキドナへの切り札となる役目を負っています。ドレイクは1部3章においてポセイドンとの因縁が示されていますし、海を舞台としてドレイクが出陣できなければ、同じく大海賊であるバーソロミューの登場にも頷けます――もちろん黒髭の登場もありえますが、そもそも彼は1部3章で大立ち回りを演じていますし、史実における彼の所業を考えれば「軍隊との海戦」という舞台により相応しいのは規律を重んじたと言われるバーソロミューでしょう。

ですが、マンドリカルドにはそれに足る登場の理由がありません。ヘクトールデュランダルとの縁も挙げることができますが、そもそもヘクトールは重要とは言えども最終盤に一瞬登場するのみです。物語全体を通して「マンドリカルドでなければならない理由」は見当たりません。唯一それに近しい存在はシャルロット・コルデーですが、コルデーが処女のまま死を迎えたことや、彼女が得るクリロノミアが女性神であるアテナのそれであること、彼女自身が戦闘能力の低いサーヴァントであることなどから考えても、彼女には「生贄」としての大きな役割が与えられていると考えられます(残酷な表現ではありますが)。マンドリカルドは、この5章において彼以外のサーヴァントでも十分務まる役割に収まった、とすることができるのではないかと思うのです。

最終的に、システムと化したアルテミスの砲撃から友人たる藤丸を守るため、ヘクトールの残したデュランダルを手に宝具「絶世の儚剣(レーヴ・デ・デュランダル)」を発動し、命を落とします。サーヴァントとしてではなく、藤丸の友達として、「友達」を守るための死でした。しかしそれさえも、マンドリカルドが「そこにいたから」以上の理由ではないように見えます。もちろん、緊急事態でアキレウスの咄嗟の判断によって召喚されたヘクトールの登場や、アルテミスの砲撃から藤丸やオリオンを守りぬく必要性が生じたという要素はあります。ですが、それさえもアキレウスが無事ならば解決したように思えます。誤解を恐れずに言えば、徹頭徹尾マンドリカルドの存在は「たまたまそこにいた」以上の理由を持たないのではないか、とさえ感じられるほどです。

だからこそ、彼だったのかもしれません。原典から見る出自を考えても、本章におけるギリシャと決して強くない結びつきを持っていたからこそ、生前の執着ではなくこの舞台において藤丸との友情を結ぶことができたのは、マンドリカルドしかいなかった。またそれを裏付けるように、本章では「生きることに意味はあるのか」という問いがなされます。その問いに対しては、過去の会話を引用しながら「生きることに意味はなく、最後に意味付けがなされるように生きていくのである」という1つの解が提示されていました。その言葉に基づくのであれば、マンドリカルドが藤丸と結んだ友情に大した意味はなく、しかし物語の最終盤「友達のために何かをしたい」という気持ちとなって、大きな意味を持つのです。それはほんの一瞬、藤丸とその仲間を守ることでした。その一瞬が本章で大きな脅威であったアルテミス撃破に繋がったことで、マンドリカルドの存在が本章における最大の意味を持つことになったのではないか、そう思えて仕方がないのです。すなわち「最後の瞬間に与えられる生きてきた理由」という。

 

・「友達」を失ってなお

最後に、マンドリカルドという初めての「友達」を失った藤丸の話をしましょう。彼はこれまで多くの出会いと別れを経験し、その過程で悩みながら、一つ一つの答えを導き出してきた人類最後のマスターです。彼にとって、全ての出会いは必然であり、意味を持つものであることでしょう。

先達を得て進む道を知り、数々の強者との出会いを経て幾重にも分かれた道を選び取った彼は、共に並び立つ存在という新たな出会いを経験しました。彼にとってそれがどのような意味を持つものなのか、それはまだ分かりませんが、確実に彼が足を進める1つの理由になることは間違いありません。異聞帯における空想樹伐採を続ける旅がこれからどのような道程を辿るのか。一人のFGOファンとして、最後までしっかり見届けたいと思っています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最後に。運営さん、次の新章はいつになりますか・・・・・・・・(震え声)