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名もなき人々の国-地下アイドルオタクによるマジLOVEキングダムについての雑感

さて、前回の記事に記載の通り、「劇場版 うたの☆プリンスさまっ♪ マジLOVEキングダム」観劇してきました。

 

めっっっっっっっちゃ良かった!!!!!!!!!!!!!!!!!!

 

うたプリ関連については正直少しだけ楽曲とキャラの顔と名前がわかる、というレベルではあったのだけれど、本当に楽しかった。具体的な内容はネタバレとかあるかもだし、何十回も見てる諸先輩がたがいらっしゃるのでそちらに譲るとして、いち地下アイドルオタクが見て最も衝撃を受けたのは、彼らは徹底して「君/あなた/お前」に歌っていた、ということです。

 

地下アイドルが最も簡単に注目される方法はなんでしょうか。様々な意見があると思いますが、ぼくはその手段の一つが「恋愛スキャンダル」だと思っています。どこそこのグループの誰それがオタクと付き合った、彼氏がいた、女の子に何股をかけていた……是か非かで言えば非とされることですが、こと地下アイドルが注目を集める、という点において「爆発的にヒットする」以外であればこれを超える手段はないのではないでしょうか。それはつまり、アイドルは「誰のものにもならない」という不文律があることを指しています。アイドルは誰のものでもない、アイドル自身のものですらない。だから「○○はみんなのアイドルだから」などという古臭い文句が定番化しているとも言えるでしょう。誰のものでもないから、みんなの愛を一身に受けることができる存在であることが、アイドルに求められていることなのかもしれません。仮に言葉にしていなかったとしても、そうした姿勢を示すアイドルが「プロフェッショナルである」と評価されていることからも、アイドルに求められていることは自然とうかがい知ることができます。だからぼくも、昨日まで「ST☆RISH/QUARTET NIGHT/HE★VENSは、みんなのアイドルなのだ」「だから『うたの☆プリンスさまっ♪』は巨大なコンテンツとして認知を得たのだ」と考えていました。もっと安直に言えば(彼らは二次元のキャラクターですが)「顔がいい男がいい歌を歌って、バックボーンになるストーリーがあるんだから、そりゃ流行るよ」という認識です。それが勘違いであったことをぼくが知るのは、開演から30分経った頃でした。

 

最初に気付いたのは、最初のMCに入った時でした。ST☆RISH/QUARTET NIGHT/HE★VENSのメンバーが、それぞれファン・ライブ・仲間への思いを語っている中に、「みんな」「お前たち」「君たち」という言葉は少なく「君」「あなた」「お前」という言葉が多い。曲中でもそうでしたが、彼らがファンを指す時に使う言葉に、二人称複数が極端に少ない。徹頭徹尾、彼らは「君/あなた/お前」に向かって語りかけます。彼らの愛を届けること、「君/あなた/お前」からの愛を確かに受け取っていること、それがかつてあった(と示唆された)問題を乗り越える大きな力となったこと、それへの感謝…極端に二人称複数の代名詞が少ないMCを挟みながら、ライブは進んでいきます。それはこの物語が「彼らとファンの物語」ではなく「彼らとあなたの物語」であること、「あなたが『うたプリ』の物語の一員であること」そして他でもない「君/あなた/ぼく」に、彼らからの愛を載せた歌を届けていることの、何よりの証明でした。

 

ぼくは「うたの☆プリンスさまっ♪」は「巨大な1つのコンテンツ」なのだと、重大な勘違いをしていました。これは、いくつもの「ST☆RISH/QUARTET NIGHT/HE★VENSとあなたの物語」であり、その積み重ねが彼らをアイドルたらしめている物語だったのです。またしても特大の衝撃でした。これまでアイドルには最もできないはずだった「永遠」を「あなただけに約束してくれる」アイドル。そんなことができるなんて思いもしなかった。そりゃ人気にもなるさ。だってそんなことできる奴いなかったもの。

 

正直に言います。このMCを聞いてぼくは少し泣きました。こんなことしてくれるアイドルがいただなんて、思いもしなかったからです。隣の席からもすすり泣く声が聞こえていました。あとでチラッと見えましたが、彼女は多くのグッズを手にしていました。何も知らないぼくでさえこんなに感情的になったのですから、ずっと追いかけている方々は心に突き刺さる言葉だったことでしょう。そんなことができる存在がアイドルでないわけがありません。ぼくは今日、最高のアイドルを目にしたのだと、はっきり自覚しました。

 

さて、そんな風に完璧にやられてしまったぼくですが、まだぼくは「うたの☆プリンスさまっ♪」のことを全くと言っていいほど知らない存在です。これからアニメの第1期〜第4期を追いかけ、どこかでゲームを揃えなければいけません。なぜってそりゃ、彼らは、今ここにアイドルがいて、どれだけの愛に囲まれてここまできたかを、こんなに鮮やかに証明してくれたのですから。