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そのスピードで - マジLOVEキングダムからうたプリにハマったぼくの雑感

ここ2ヶ月くらい、(あくまでぼくの基準なんだけど)どっぷりとうたプリに浸かり続ける日々を送ってきたので、なんだかある意味当たり前のような感覚なのだけどーーーー数えて4回マジLOVEキングダムを観ました(地元で2回、品川で2回)。王様のブランチの映画ランキングでマジLOVEキングダムが出てきたとき、母が「これ、あんた見に行ったやつ?」と聞いてきたので「うん。来週も見に行く」と言った時の顔、見せてあげたい。けどまあ考えてみると当たり前と言えば当たり前の話で、「同じ映画を何回も見に行ってる」って結構すごいことなんではないか、と思いますーーーーオタクコンテンツにおいてはよく聞く話だけど。かく言うぼくも「なんでマジLOVEキングダム何回も見てるの?」と聞かれると、少し答えに窮するところがあります。アンコールの内容は週ごとに違ったりしていますが、言ってしまえば同じ内容の映画を何回も見ているわけですから、疑問になるのも当然と言えば当然です。しかしまあ敢えてそこで考えてみると、マジLOVEキングダムには「ストーリーの分岐点が限りなく存在している」ということができるのではないか、と思うのです。

 

「欠落の美」という言葉をご存知でしょうか。ルーヴル美術館に所蔵されている「サモトラケのニケ」は勝利の女神ニケを象った彫刻として世界的に有名ですが、首、左腕などが欠損しています。作者の意図とは外れたその欠損は、しかし一方でその欠損が、見る者に本来あったはずの完成形を想像させるーーーーだからこそ、その欠損こそが美の象徴である、とするような考え方です。

ちょっと大げさですが、ぼくはマジLOVEキングダムにこれと同じような「欠損」を感じたのです。マジLOVEキングダムは、全編を一本のライブとして構成されています。一般的な映画にある起承転結、あるいは序破急のような構成はありません。ライブ中のMCやセリフなどはありますが、ほぼ全編がST☆RISHQUARTET NIGHTHE★VENSの楽曲で構成されるーーーーそれはすなわち、この映画には「ストーリー」と呼べるストーリーがないことを意味します。通常の映画においては、明らかな、破綻です。

 

しかし、これは「うたプリ」でした。

 

うたプリはプリンスとプリンセスの物語である」「マジLOVEキングダムは、その1対1の物語の集合である」とぼくが結論づけたのは、前回・前々回のブログで述べた通りです(せっかくなんで読んでくれたら嬉しいです)。確かに普通の映画なら、120分前後でストーリーを最初から最後まで描かなければなりません。ですが、うたプリにおいては、見に来たプリンセス諸氏の数だけ、既にストーリーがあり、彼ら/彼女らが、本来必要であったストーリーの欠損を埋めるだけのエピソードを持っているわけで、ストーリーはある意味では必要ないと言ってもいいのかもしれません。なぜって、うたプリは「あなた」とプリンスたちの物語なのですから。

 

ぼくがうたプリにハマり始めた時に少し不思議に思っていることがありました。個人的経験を語らせてもらうと、コンテンツが大きくなればなるほど、その中で「古参」「新参」のマウンティング合戦が起きる可能性が高まる、と思っています。それ故の衝突もきっと起こるだろうと思っていましたし、メモ帳4枚お気持ち表明ツイートみたいなのもどんどん増えるんだろうな、と思っていたのですが、ぼくの観測範囲が狭いとはいえ、そういう衝突がほとんど見当たらなかったことです。いや少しは製作陣批判とかあるんだろうな、とか思いましたけど、全然見なかった。なんならぼくみたいなド新規野郎がドヤ顔でブログとか書いちゃったりしてるのに、すげえ好意的に受け止めてくれる方々ばっか(この場を借りて御礼申し上げます)。けどそれは「あなたとプリンスたちの物語」の話を考えるとすごく合点のいく話で、要はぼくにも「ぼくとプリンスたちの物語」があって、うたプリ界隈においては「あなたの物語」として数々の物語があることが当たり前になってるんだろうな、と感じました。「マニアがジャンルを滅ぼす論」なんかが跋扈する中で、これは画期的なことではなかろうか、と思います。「個の物語」の集合体が、これだけ人を感動させたという点だけで、そりゃこれだけ大きくもなるわな、とぼくはすっかり納得してやられてしまったわけです。

 

それで、すっかりやられてしまったぼくがこれからどうなるか、という話ですが、今のところアニメの一期を見終えた、くらいのところです。秋口にはゲームも出るらしいので買うでしょう(おちんぎんがたりませんたすけて)。きっとまたツイッターで大騒ぎしたりしているし、アニソンDJなのでうたプリの曲をかけたりして泣いたりもするでしょう。そうやってぼくは、ぼくなりのスピードで、プリンスたちの物語にある欠損を、一つ一つ埋めていくのだと思います。